2010年08月14日

好きな作家 - 丸谷才一

昔から本が好きで、一時でも手元からはなせないのですが、そんなに幅広く読んでいるわけではありません。
好きになると続ける方ですね。

まずは、丸谷才一。この人は、エッセイの素晴らしさから夢中になりました。
たぶん「男のポケット」が一番最初に読んだエッセイだと思いますが、本棚を見ると見つかりません。丸谷才一の本は60冊くらい並んでいるのに抜き出してどこかに残っているはず。
エッセイの達人として有名ですから、どれも良いんですが書評が結構入っていて、そこで紹介された作家も読み始めるということになるんですよ。
吉行淳之介、吉田健一あたりは、丸谷才一のエッセイの影響で好きになったんです。
吉田健一さん(吉田茂元首相の長男)は本当は英文学者なんですが、文章も素晴らしくて、というかちょっとしつこい癖がある文章なんですが、いってみれば厚い空気の層を超えた風景を描写するような感じがするんです。
これは多分、丸谷才一さんが英文学に深く関わっていて、英文学の感性を持っているためでしょう。

丸谷才一さんは英語教師から、ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」の共訳で有名になりました。
イギリス小説の持つ風俗性に知的な味わいを加えたモダーンな文章がいいんですよ。粋でしゃれていてミステリーに関するエッセイの文章に雑学のうんちくが知的で読んでいてうれしくなります。
また、歴史仮名遣いで書くので有名です。

小説では、戦争忌避者として過ごした主人公が戦後も影響を引きずっていく話で、最高傑作という評価を受けている「笹まくら」となぜか個人的に好きな「横しぐれ」ですね。
1975年に講談社から第1刷がでて、私が持っているのは同じ 1975年の第5刷ですから、短い時期にかなり売れたんでしょうね。

「横しぐれ」は、主人公の父親が戦前に友人と四国に行ったときにたまたま会った坊さんの話を聞いたことが発端で、その後、主人公が自由律の俳句に出会って「しぐれ」という言葉から昔父親が会ったのは種田山頭火ではないかと考えて、山頭火のことを調べていく話です。

 しぐるるや死なないでゐる

とかの句も印象深いのですが、

 うしろすがたのしぐれていくか

という句は、まるで映画のシーンのようですよね。
主人公はここから死暮れを想像していくわけですよ。
とにかく、「横しぐれ」は私にとっては思い出深い名作で、ますます丸谷才一という人の文章に夢中になったんですよ。

山田温泉-2.jpg
 つかれもなやみもあつい湯にずんぶり

             山頭火

そういえば、前にブログに書きましたけれど、今年の年賀状に使った長野県高山村山田温泉の共同浴場「大湯」の前にも山頭火の石碑の句は、実際には万座温泉で詠まれたそうです。
http://ogu-san.seesaa.net/archives/20091227-1.html

万座温泉も大好きな温泉だから文句はないですけれど、山田温泉の湯も良かったし、句にぴったりなんですけれどね。
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2010年07月19日

好きな作家 - レイモンド・チャンドラー

レイモンド・チャンドラーは、「ハードボイルド」と呼ばれるミステリーの代表的な作家として有名なのはご存じの方が多いでしょう。

最初は、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」ものあたりを読みあさって、それから松本清張の本に移りました。
映画が大好きだったせいもあって、多分、ロバート・ミッチャムが主演の「さらば愛しき女よ」とした映画から「ハヤカワ文庫」のフィリップ・マーロウものに夢中になったんだと思います。
ロバート・ミッチャムは大柄なので、ちょっとフィリップ・マーロウとはイメージが違うのですけれど、雰囲気が気に入っていて、シャーロット・ランプリングが豪邸の2階からシルエットで「ハロー」と声をかけて階段を下りてくるのが良い感じでミステリーとして引き込まれるんですよ。
日本の社会派ミステリーもそれなりに良くて点と線の空白の4分間などの印象深い場面があるのですけれど、ちょっと好みとは違うんですね。

チャンドラーの翻訳は、清水俊一訳が一番多いけれど、映画に永く関わっていたせいか無駄な言葉が省略をされていて、切れが良く読んでいて気持ちが良くなります。

レイモンド・チャンドラーはアイルランド系のアメリカ人で、1888年にシカゴに生まれています。
ビジネスにも能力があったようで、石油シンジケートのバイス・プレジデントにまでなっています。
シシーという18歳年上の美しい女性と結婚をしていて、惚れ込んでいてシシーが亡くなるとアルコールに溺れるようになるんですね。
NHK TV でシシーの写真が出ていて、見ましたけれど確かに、きれいな助成ですね。 チャンドラーの小説には、シシーの影響がすごく強いように思います。
いろいろな場面でシシーの青い矢車菊の色をした瞳の色という表現が良く出てきます。
「さらば愛しき女(ひと)よ」にも登場人物の1人が服のラペル(下襟)のボタンホールに矢車菊を挿していた描写がありましたね。

なんと言ってもレイモンド・チャンドラーはハードボイルドの代表的な探偵フィリップ・マーロウの生みの親です。
フィリップ・マーロウの一人称で物語が進んでいくのですが、生き生きとした人物描写としゃれた言葉が随所にちりばめられた文学性の高い文体が素晴らしいですね。
チャンドラーの作品には名台詞がちりばめられているのも魅力です。
プレイバックは、いろいろと問題があるのですが、台詞としては、「If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.」というのが有名ですね。
清水俊一訳では「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」となっていて、丸谷才一がEQMM(エラリー・クイーン・ミステリー・マガジン」のエッセイで採り上げてから有名になった台詞です。
この台詞を、生島治郎がしばしば引き合いに出して、1978年の角川映画『野性の証明』で生島の訳を元に「男はタフでなければ生きて行けない。優しくなければ生きている資格がない」というキャッチコピーに使われたので、有名になりました。
でも、「やさしくなければ」ではなくて「やさしくなれなければ」なんで、ちょっとイメージが違うんですけれどね。
この EQMM は昭和37年8月号らしいんですが、まだ EQMM を読むような年齢ではありませんでしたから、昭和53年6月に第一刷発行の講談社の「深夜の散歩」という本で読みました。
丸谷才一という人は元々英文学者でジェームズ・ジョイスに傾倒するような人ですから、有名ではなかった文節に感動をすることができ、それをエッセイで紹介することができる文章力を持っているんでしょう。

ハンフリー・ボガート.jpgフィリップ・マーロウを主人公とする映画は沢山作成されていて、マーロウを演じた俳優も沢山いる。
 * ジェームズ・ガーナー
 * ジェームズ・カーン
 * エリオット・グールド
 * ハンフリー・ボガート
 * ロバート・ミッチャム
 * ジョージ・モンゴメリー
 * ロバート・モンゴメリー
 * パワーズ・ブース
レイモンド・チャンドラー自身は、ハンフリー・ボガートが自分のイメージに一番近いと言った。

私もそうですけれど、チャンドラー・ファンはチャンドラーの文体とともに、探偵フィリップ・マーロウに惚れ込んでしまうのでしょう。
個人的には、先の「さらば愛しき女よ」とともに清水俊一訳「長いお別れ」(ロング・グッドバイ)が好きですね。
マーロウのテリー・レノックスに対する友情に熱くなるんですよ。
そして「ギムレットには早過ぎるね」というようなしゃれた会話で参ってしまうんですよ。
posted by ogu at 01:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする